自民党 科学技術イノベーション戦略調査会 中間提言へのコメント発表について

自民党 科学技術イノベーション戦略調査会が公表した「第7期科学技術イノベーション基本計画に関する中間提言」では、12の大きな提言の一つとしてAI駆動科学が取り上げられました。これに関連し、AIロボット駆動科学イニシアティブは、(社)サイエンス・メディア・センターを通じてコメントを発表しました。

詳細は以下をご覧ください。
https://smc-japan.org/?p=4748
※(社)サイエンス・メディア・センターのコメント掲載ページが開きます


AIロボット駆動科学イニシアティブ共同代表・高橋恒一 コメント全文

急速に発展するAIを科学技術研究の飛躍的な革新のために使うことはAI for Scienceと呼ばれます。この考え方をさらに推し進めると、AIやロボットに自律的に研究を行わせるいわゆるAI駆動型科学となります。今回の提言では、これらの考え方が「研究のあり方を根底から変えうるゲームチェンジャー」であり、「戦略的かつスピード感を持って強力に推進しなければならない」と述べられています。これは、我が国が今後向かわなければならない方向性として、国際的な科学研究の潮流にも沿った正しい認識であり、高く評価できます。

日本国内では、最近ではAIロボット駆動科学イニシアティブがこの分野の推進を担う産官学の集結の場を提供することを目論見ているほか、理化学研究所が新組織を立ち上げるなど、新たな動きが活発化しています。しかし、AIロボット駆動の新しい方法論で国際的な競争力を得るには巨額の投資と考え方の大きな変革が必要です。日本では2010年代からこの分野の重要性を提言する研究者もおり、考え方の面では国際的にも比較的早期から醸成が進んで来ましたが、その一方で国や企業からの本格的な投資はこれからという面がありました。その意味でも、今回の提言をきっかけに国の基本計画に具体的に盛り込まれることが期待されます。

AI分野ではOpenAIやGAFAなどの新興企業が兆円単位の巨額投資を行い先行しています。一方、実験科学の現場ではロボット実験によりデータを直接作り出す考え方が重要です。日本には、マテリアル産業の世界シェア、バイオ産業の成長に加え、生産技術で培ったオートメーションシステム、ロボット産業の基盤があり、これらと学術界の相互作用による発展が期待されます。課題として、一旦AIロボットの利用により研究生産性が高まる流れが出来ると、資本は自動化に流れることになり、職業研究者中心の伝統的な研究組織では一時的な軋轢を生む可能性があります。提言にもある通りこれは「歴史的転換点」であり、研究組織のあり方や人材育成の方法から根本的に考え直す必要性があるでしょう。また、AI分野では5年は非常に長い時間であり、数週間単位で革新が起きるという特性があります。投資の大きさと迅速な意思決定の両立が死活問題です。このことから、国は、目的の硬直化やマイクロマネジメントに結びつきやすい直轄型事業ではなく、資金供給、人材供給、エコシステムの拡大などのこれまでとは違ったやり方の模索が必要と思われます。